腰を、揺らす、ふたり。
『B・2』
小一時間程、屋上で真っ白になっていたカガリだったが、
(・・・明日の準備・・・!!なにも出来なかった・・・・!!)
と気付いた。
がっくりと肩を落として職員室にトボトボと戻る。
「カガリ先生、どこに行ってたの?」
自分の教務机で、生徒の提出物をチェックしていたミリアリアは、目を丸くさせた。
カガリはウルウルと泣きそうに目を揺らし、
「ハウ先生!私、私、大変なもの見ちゃって・・・・!!」
そう言って、うわーん!とミリアリアに抱きついた。
「ちょっ、ちょっと!一体どうしたっていうの?!」
「なになに?どうかしたわけ?」
ミリアリアの隣で、優雅にコーヒーを啜っていたフレイもカガリを覗き込む。
「あ、あのですねっ・・・・生徒同士が・・・・っ!!」
そこで、カガリははっと気付いた。
(・・・いや、待て私。はたして、これは言ってもいいのだろうか・・・?!)
「カガリ先生?」
「ちょっとちょっと」
(よくよく考えたら、プライベートな事だろうし・・・!もし、あの子達が付き合ってて、あーゆー事してたんなら、今ここで私がそーゆー事言っちゃったら、単にあの子達の事がこの二人にバレるだけで、それって・・・あんまり良くないんじゃぁ・・・・?!)
「カーガーリーせーんーせー?」
「ちょっとなに青い顔してんのよ?言い出したなら最後まで言ってよ・・・あれ?」
(はっ!?いやしかし、待て私!あの女の子は明らかに泣いていたし、だめってアスラン・ザラに訴えてたじゃないか!!やっぱり、アレは無理やりの犯罪行為だ!!よーし!今すぐこの二人にチクって・・・・!!!)
ゴッ!!
小気味良い音と共に、カガリの頭に教科書の角が刺さる。
「いたぁっっ!!?なな、何をするんですか!アルスター先生!?」
「青い顔してると思ったら、赤くなったりして、人の話を聞いてないからよ。ほら、あんたにお客だってさ」
フレイは教科書をぽんっとカガリの前に置くと、呆れた顔で職員室の扉を顎で指した。
「・・・え?生徒が会いに!?」
途端、痛さで涙を浮かべていたカガリの顔から、涙が引っ込んだ。
「なんかそれって、物凄く教師っぽい!!」
「てゆーか、教師なんだけど」
「落し物拾ったとかそーゆーのじゃないの?」
ぼそりと呟くミリアリアとフレイの言葉を聞かなかった事にし、カガリは、るんたった、と扉に向かった。
「はーい、どちらさん?」
満面の笑顔を廊下側に突き出して、カガリはびきっと固まった。
「彼」は、にこりと微笑んだ。
先程あのような行為をしていたとは思えない程、とても柔らかく。
(さっきの強姦魔・・・!!!)
カガリはぎぎぎっと、首を職員室内に向けた。
「ア、アルスター先・・・!」
引きつった顔で何とか助けを呼ぼうとするが、
「んぐっ!?んぐぐっ!!」
その口はアスランの手によって塞がれ、強引に廊下に引きずり出された。
そのまま、ずるずると古ぼけた教室に引きずり込まれる。
「うっ、うわぁっ!?なに考えてるんだ!ここっ、ここはっ・・・!!」
なんとか必死に手を振り払い、カガリは喚いた。
「大丈夫、この教室はもうずっと使われてないから」
真っ赤になるカガリに、アスランは笑った。
今度は、口元を歪めるような笑みだった。
(なにこいつ・・・・!!!)
ぎょぎょっと、腰を引くカガリに、アスランはくっくっと笑った。
そして、カガリを壁に押し付けると、囁いた。
「誰にも言わないでくれないか?さっき、あんたが見たの」
さっき、私が見たの。
カガリは更に真っ赤になった。
「ふっ、ふざけるな・・・!なんで私が黙ってなきゃいけないんだ!この強姦魔めっ!!」
「・・・強姦魔?それは誤解だよ。俺達は合意の上で・・・」
「ばかっ!変態っ!あの子、泣いてたじゃないか!だめって言ってたじゃないか!!嫌がってるあの子を、お前が無理やり・・・っ!!」
カガリは、怒りと、こんな事を言わなくてはいけない恥ずかしさで、湯気が出そうな程、真っ赤な顔で怒鳴った。
暫しぽかんとした顔で聞いていたアスランは、その言葉に思わず噴き出した。
「なっ!なに笑ってるんだ!!?」
カガリは、かっとする。
アスランは、哂った。
「先生、あんた、経験ないんだ?」
「は?!なんだ!?何の経験だ?!子供が大人を馬鹿にしたような言い方をするな!!」
アスランは珍しいものを見るような目で、カガリを眺めた。
カガリは、怒りでふるふると震えた。
(・・・なんか、馬鹿にされてるのだけは、わかる・・・・っ!!)
突然、彼はすっと、カガリの顔の目の前に自らの顔を寄せた。
思わずカガリは仰け反る。
「ちょっ、近いってばっ・・・!」
カガリが慌てふためくが、アスランはいたって涼しげな表情で言った。
「とにかく、誰にも言うなよ?新米先生。あの子だって迷惑するから」
「?!」
「女の子なら嫌なんじゃないか?体育倉庫で、男とヤッてた所を他人に覗かれたなんて、人に知られたら」
カガリは、ぐっと言葉を詰まらせた。
(そ・・・そうかも・・・・!!)
ガックリと項垂れてしまったカガリを見つめ、アスランはふっと笑った。
彼女の耳元で、低く囁く。
「・・・ね。ヤらせて?」
ゴッ!!
鈍い音と共に、海老反りの如く仰け反ったカガリの頭が、コンクリートの壁に激突した。
「な、な、な・・・っ!?」
頭に響く激痛に耐えながら、カガリは、声を振るわせた。
「なに言ってるんだ、おま・・・」
「大丈夫。怖くない」
そう笑って、アスランはカガリの首筋に顔を埋める。
カガリは、飛び上がった。
「なっ、なっ!?ちょっとやめろよ!!なにし・・・・痛っ!?」
ちくり、と首筋に痛みが走り、カガリは悲鳴を上げた。
それに構わず、アスランは更にその場所に舌を這わせ始めた。
カガリの背筋にびりっ、と電流が走る。
「やっ・・・!!」
口をパクパクとさせ、明らかにパニックになっているカガリの唇を、嘲るように、アスランは指で撫でた。
これは、なに。
カガリは、目の前が白く霞むのを感じた。
遠くで、自分の声が聞こえる。
「んっ・・・んむっ・・・」
深く口付けられ、カガリはガクガクと震える両足を必死に踏ん張らせた。
崩れ落ちそうになるになる身体を、アスランの袖を掴む事で、何とか耐える。
その間、アスランは、目をうっすらと開けて、カガリの表情を堪能していた。
そして、漸く唇を離すと、銀色の糸がぷつり、と切れた。
カガリは途端にアスランの胸に崩れ落ちた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・な、にす・・・!?」
荒く息を切らし、カガリは涙目でアスランを睨んだ。
唾液で濡れた自分の唇を、汚らしいものでも付いたかのように、ゴシゴシと擦りながら。
(はっ・・・初めてだったのに・・・・!!)
アスランはカガリの怒りなど気にもしない風に、何のてらいもなく、ブラウスの上から彼女の胸に触れ始めた。
「きゃぁっ!?」
慌てて、手を振り払おうとするが、逆に両手を一括りに絡め取られ、頭上で押さえつけられる。
そのまま、片手で胸の頂点を探り出そうと指を動かし始めた。
「いやっ・・いやだ!!やめろ!触るな!!」
「セックスはいやらしい?汚らわしい?処女だけだよ、そんな事思うのは」
ぐに、とそこを押す。
途端に、カガリの咽喉から高い声が漏れた。
涙が零れそうになるのを、必死に堪える。
(私が泣く?赴任初日に生徒に泣かされる?)
混乱する頭は、不条理な事態に、もはや正常な判断を下せない。
カガリは、彼に拘束されたままの手を震わせ、涙声で喚いた。
「お前っ・・・!彼女がいるくせに!何考えてるんだよぉっ・・・!?」
彼は、指の動きを止めず、言った。
「彼女じゃないよ。顧客だよ」
「わけわかんない事いうなっ!!」
「最初は嫌がった女も、一人だけいたけど、すぐリピーターになった。でも、俺はタダじゃないから、二回目から女が金を払う」
「だから、何言ってんだよっ!?」
カガリは、ついにボロボロと涙を零した。
「こんな事して、ビーみたいになっちゃっても知らないからなっ・・!!」
嗚咽と共に精一杯叫ぶと、
アスランは、指の動きを止めた。
「・・・・ビー?」
アスランが止まった事に、カガリは一瞬驚いたが、すぐにまくしたてた。
「そうだ!この学校にいるんだ!たくさんの女子を襲ってるヤツだ!お前の今しようとしている事は、ビーと同じ行為だ!だからやめろ!!」
ややあって、カガリの耳に、くすり、と忍び笑いが届いた。
彼女が目を見張ると、彼は肩を震わせていた。
「・・・ビーの意味、教えてあげようか?」
「・・・え」
彼の唇が、ゆっくりと下弦を描いた。
「スペルで、BEE。蜂の事だよ」
蜂。
カガリは眉を顰めた。
「なんで蜂・・・?」
「蜂ってのは、花の蜜をすすって、針で刺す虫」
「!知ってるさ、それくらい・・・っ!」
むっとして噛み付いたカガリのスカートに、アスランは手をかけた。
ぎょっと、カガリはその手を凝視した。
「だからね」
強く、自分の腰を、女の腰に押し付ける。
カガリはひっと声を漏らした。
(硬い、なにか、が・・・あたってる・・・)
フラッシュバックするのは、体育倉庫での、ふたり。
腰を、揺らす、ふたり。
完全に固まったカガリの耳元で、アスランは熱っぽく囁いた。
「吸わせて、先生の蜜」
ゆっくりと耳の中に己の舌を捻じ込む。
「ひゃぁあっ!?」
背筋に電流が走り、跳ね上がるカガリを抱きしめた。
スカートの中に手を入れて、滑らかな肌を撫で上げる。
「やだっ・・・やだぁっ・・・!!」
下着をずるりと引き下ろし、
「刺させて、先生の中に」
チャックの、ヂャッ、という金属音が響き、
「俺の、針」
そして、彼は彼女の唇に噛み付いた。
熱い『針』を、彼女に突き入れて。
「壇上のあんたは、ずどん、ときたよ」
アスランは、吐息と共に囁いた。
「・・・俺の、腰に」
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