「刺させて、先生の中に」


「俺の、針」

『B・3』



その瞬間、絶叫が咽喉の奥で弾けた。
「―――――っっ!!!!!」
引き裂かれた内部が、急速に収束する。
破瓜の血が滴り落ちる。
アスランは、カガリの唇から己の唇を離し、息を詰めた。
「・・・っきつ・・・!」
「ひ、ァう・・・っ、ァあ・・・っ」
カガリの目は、あまりの激痛に焦点を結べず、ただ、強張った身体が、びくっ、びくっと引き攣りを起こした。
「・・・抜い・・・っ、あ、っ・・・・」
咽喉から出る声は、嗚咽を伴い、ただ、焼けるような熱さに、震える息だけが漏れた。
「先生・・・ちゃんと息して」
アスランは、あやすようにカガリの瞼にキスを落としていく。
だが、カガリの頭は痛さで一杯だった。
「・・ぁあっ・・・う、っく・・・!いっ・・・ひっく・・・痛いよっ・・!抜いてぇ・・・っっ頼むからぁ・・・!」
「・・・大丈夫だ。ほら、だんだん濡れてきた」
内からは、傷を治そうと、愛液が分泌され始める。
「それに、まだ、俺の全部入りきってないんだ」



(全部・・・・入りきる・・・・って?)


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこに?)




(私の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中・・・・・・・・・・・に・・・・・・・?)


今自分の身体に起こっている事態に、カガリは、とうとう意識を手放した。




「・・・先生?」
アスランは意識を失ったカガリを覗き込んだ。
彼女の閉じられた目尻からは、真新しい涙が零れている。
アスランは、嘆息をついた。

「見た目より、ヤワだな・・・」


「あなたが強引過ぎるんですわ、アスラン」


鈴の音が響く。
アスランは振り向いた。

「・・・ラクス」
教室の入り口の戸を背に、桜色の髪を一つに束ねた、白衣の女性が立っていた。
女は、空色の瞳を呆れたように瞬かせた。
「たまたま通ったら、悲鳴が聞こえるんですもの。この教室を使う方は貴方ぐらいしか存じ上げませんから、まさかと思ったら・・・」
呆れましたわ、と大袈裟に肩を竦める。
アスランは、悪びれもせずに答えた。
「それなら、もう少し後に来てくれないか?まだ、俺イってないんだ」
「何を勝手な事を・・・。彼女、失神してらっしゃるじゃないですか。まったく、貴方は、ご自分のモノが、人一倍大きい事を認識するべきですわ」

ラクスは、二人に近付くと、カガリの腿を伝う赤に眉を顰めた。
「まぁ・・・しかも、初めての方に・・・本当に鬼畜ですわね」
「痛みを伴わない快楽なんて、本物じゃない。これは、次回気持ち良くなる為の、避けては通れぬ道だよ」
アスランは、ずるっと自身をカガリから引き抜いた。
そのまま崩れ落ちそうになるカガリを、両手で支え、衣服を整えてやる。
その様を、ラクスは横目で見ながら、問うた。
「あら、よろしいんですの?」
「流石に、ラクスの前で続ける気はないよ」
アスランはそう言って、自分のチャックを閉めた。

「とりあえず、この新米先生を保健室に運ぼう。そしたら、後は頼むよ、ラクス」
「・・・まったく、いつもこうなのですから。私の保健室は、貴方に抱かれた女性達の休憩所ではないのですよ!」
ラクスは、アスランを横目で睨んだ。
「いつもいつも、私のお部屋は、ビーとの猥談を語る女生徒達で一杯ですわ。どれ程気持ちよかったかとか、身体の相性がどうだとか、自分の財布の中身が大変だとか・・・・・。その面々に、今度は女教師まで加わるわけですね?」
アスランは、苦笑した。
「いや、この先生はちょっと違うと思う」
「なぜ?」
「これから避けられる気がする。ラクスの言う通り、流石にいきなり入れるのは強引だったかなぁ」
大して悪びれた様子もなく、アスランは笑った。
「避けるようなら、よろしいのですけど」
ラクスが冷ややかに言う。

「最初は、レイプから始まった関係でも・・・・・・・・・その後、貴方の虜になってしまった者を知ってますわ」
空色の瞳が陰りを帯びる。

アスランは、ラクスを見つめて笑った。
「それは、襲った甲斐があったってものだな。この先生もそうなると面白いんだが」
ラクスは、アスランに背を向けた。
アスランは愉しそうに続ける。

「なんせ、まだ全然、味わい尽くしてないからな」





「ええ?!そんな様子まるでなかったけど・・・」
驚いた女性の声が聞こえる。
「そうでしたの?とても苦しそうな御様子で来られましたわよ」
対して、とても静かな柔らかい声が響く。
「二日目だったなんて・・・・そうかぁ。あの子のあの緊張ぶりも、それが原因してたのね」
心配そうな声が重なる。
「心配なさらないで。薬を飲んで、今は静かに眠っておられます。起きられたら、タクシーでご自宅に送りますわ」
「そうね、ありがとう、ラクス先生」
「今日は、無理しない方がいいものね。明日に備えて、休んで貰わないとね」
三つの足音が響き、次いで、ガラッと戸の開く音がした。
それじゃぁ、という声が聞こえ、再び、ガラッと戸が閉まる音がする。

カガリはうっすらと目を開けた。
目の前に白い天井が広がる。
ぼんやりと辺りを見渡す。
(ここは・・・・保健室・・・・?)
カガリは、ぼーっとする頭を稼動させ始めた。

(えーっと・・・私、どうしたんだっけ?)
(たしか・・・朝礼で新任の挨拶をして・・・)
(その後、職員室でアルスター先生とハウ先生と喋ってて・・・・)

(それから・・・・)


ストンと脳裏に翡翠の影が落ちる。
「・・・・・・っっ!!!」
カガリは口元を抑えた。
思い出すのは、微笑む少年。


「・・・・・・・・・っいゃぁああっ!!」

嘔吐感と、涙がせり上がってくる。
カガリの泣き声を聞いて、ラクスがベッド脇のカーテンを慌てて開けた。
震えるカガリの背を優しく撫でる。
「大丈夫ですわ。落ち着いて。彼はいませんわ」
「ひっ・・・ひっく・・・っ」
カガリは、涙を流しながらラクスを見た。
「私・・・私・・・っ!!」
「大丈夫。すべて存じておりますわ」
ラクスが柔らかく笑う。
「私は、保険医のラクス・クラインです。初めまして、ですわね。アスハ先生」


暫く経って、カガリは漸く少し落ち着きを取り戻した。
すん、と鼻をすすると、抱きついていたラクスの身体を放した。
「・・・ごめんなさい、クライン先生。取り乱して・・・」
ラクスは、そんなカガリをじっと観察していた。
「もう、落ち着きましたか?」
「・・・はい・・・」
良かったですわ、と笑うラクスを見て、カガリは漸く本当に安心した。
そして、おずおずと、気になっていた事を尋ねる。
「・・・それで、あの・・・私、一体どうしてここに・・・?」
ラクスは嘆かわしそうに、眉尻を下げた。
「偶然、私が、貴女がビーに襲われていた所を、通り掛かったのです。それから、彼と一緒に、気を失った貴女を、ここに運んだのですわ」
そこまで言って、ラクスは、探るように空色の目を細めた。
「・・・・彼は、いかがでした?」

ラクスは、カガリをじっと見つめる。
カガリは、その視線に気付かず、ぐっと拳を握り締め、歯を食い縛っていた。
「あいつ・・・っ!あんなニコニコしながら、いきなり、あんな事しやがって・・・っ!!!あの強姦魔め・・・っ!!」

彼女の言葉に、空色の眼差しが、少し色味を変える。

「そうだ、あの男・・・っ!あのアスラン・ザラ・・・っ!!」




「それ以上言ってはいけませんわ、アスハ先生」
怒りに喚き出しそうになるカガリの声を、鈴の音が静かに遮った。


カガリが、驚いてラクスを見ると、女はカガリの耳元に口元を寄せた。
「彼がビーだという事は、誰にも口外してはなりません」
「なっ、何故です?!」
「彼は、この学校の名誉生徒会長。そして、理事長の息子なのです。貴女が、誰かにこの事を口外したら・・・・」
ラクスは、カガリの目を覗き込んだ。

「その時、この学校にいられなくなるのは貴女ですわ」

「・・・・・・・・・・っ!!?」
カガリは、目を見開いた。
「なっ、なんでですか!?あいつがっ・・・私に何をしたと思ってるんですか・・・っ!?」
「関係ありませんわ。彼の父親がそんな事実は、揉み消すでしょう」
「揉み消すって、揉み消せるはずないだろう!?被害者の私が、この学校にいるんだぞ!!」
驚愕に、声をわななかせ、カガリはラクスの肩を揺さぶった。
ラクスは、そんな彼女を静かに見つめ、
ですから、その時、貴女は辞めさせられます」
と、言った。

「・・・そっ・・・そんなばかな・・・っ」
声が震える。
咽喉が渇く。
「そんなの・・・許されるはずが・・・っ・・・」
「それに、もし貴女がこの事を誰かに洩らせば、生徒達も悲しみますわよ」
ラクスの言葉に、カガリはばっと顔を上げた。
「えっ!?」
「ここは、国立トップの名門校ですもの。その評判が地の底まで落ちるような事があれば、この門をくぐる事を夢見て、やっと受験合格した生徒達の嘆く様は・・・・さぞ凄まじい事でしょうから」

琥珀の瞳が揺れる。
(そんな・・・っ・・・でも・・・・!)
悔しさで、涙が溢れてくる
ラクスは、その涙を指でゆっくりと拭った。
「さぁ、もう泣かないで下さいな。ウサギさんの目になってしまいますわよ」
優しい声音が、鼓膜に響く。

「悪い犬に噛まれたと思って、忘れておしまいなさい」



(悪い・・・犬に噛まれたと思って・・・?!)
カガリはラクスを、信じられない、といった目で見た。
笑おう、として失敗する。
カガリは、口元が震えているのが解った。
「そんな・・・クライン先生、貴女はどうしてそんな風に・・・っ!?」

(私が、どんな目に遭ったか知っていながら。
同じ女でありながら。)

カガリは喚いた。

「じゃあ、貴女は犬に噛まれた事を忘れられるのかっ・・・?!」



ラクスは、笑った。
「ビーに隙を見せた貴女が悪いのです」



それは、とても澄んだ、冷ややかな目で。
それは、とても涼やかな、凍てついた声で。






「彼を欲情させた、貴女が一番悪いのです」








その頃、体育倉庫では、再び男女が抱き合っていた。

「起きたらいないから寂しかったのよ。でも、戻ってきてくれたから嬉しかった」
ルナマリアが、しな垂れかかる。
「しかも、いきなり入れてくるんだもの・・・びっくりしちゃったわ」
アスランは、笑った。
「ごめんごめん。実はさっきのじゃ足りなかったんだ」
言いながら、ルナマリアの胸を揉みしだく。
ルナマリアは、熱い息を洩らした。
「あんっ・・・もぉ、駄目だってばぁ・・・」
そう言いながらも、誘うように身をくねらせる。
「ふふっ・・・でも、足りない、なんて初めて言ったね。いつも私が気絶したら、終わり、って感じなのに」
ルナマリアはアスランの舌に舌を絡ませた。
くちゅくちゅ、と音が響き、唾液が口元から零れる。

「もう一回していい?」
アスランが囁いた。
ルナマリアは驚いた。
「・・・本当に珍しいわね。でも、嬉しいから、いいわよ」
そして、ふふっと頬を染め、上目遣いで囁き返す。
「・・・・・・でも、ちょっとは手加減してね?腰、立たなくなっちゃう」
「駄目」
アスランは、女の秘所に自身を突き入れた。
「ァああっ・・・!!」
高く鳴く女を激しく揺さぶりながら、アスランは熱っぽく哂った。
「相手が気絶するまでしなきゃ、セックスじゃない」

それになにより、と心の中で呟く。


(まだまだ、この熱は収まらない)


(・・・・・・・・・・・あの新米先生の所為で)